オムロンエキスパートリンク株式会社は、オムロングループの人事・総務・経理の関連業務を一手に担い、また人材サービスを提供する企業として2018年に設立されました。
各分野の高度な専門性を持つ人財と機能を集約し、ガバナンスの強化と運営効率向上の実現に取り組んでいます。さらにオムロングループの「事業基盤の構築」を通して、オムロンの企業理念である「よりよい社会づくり」に貢献し続けています。
オムロンエキスパートリンク株式会社 櫛田昌徳様には、2017年に海外の安全管理体制構築についてお話を伺いました。海外でトラブルにあわれた従業員の方をサポートし、その方が帰国された際に言われる「ありがとう」の一言が危機管理業務に携わっていて良かったと思う瞬間と言われる櫛田様。オムロングループの従業員の方の健康と安全を守るためにご尽力されている櫛田様に、2017年以降の約5年間、どのような海外安全管理対策をとられてきたのか、またCOVID-19 パンデミック時でのご対応も含め、お話を伺いました。
―2017年インタビュー当時、御社では、オープンチケットを廃止し、弊社のアシスタンスサービスやデジタルツールである「トラッカー」を導入するなど、海外出張管理体制を大きく改革されていました。弊社サービスの導入に際し、御社にとって何が大きなメリットだったのか教えてください。
インターナショナルSOSのサービスを導入する弊社における大きなメリットは3つあると考えております。
まず、1つ目は、なんといっても、「グローバルに対応してもらえる」という点です。弊社では、全世界の危機管理について、各リージョンと連携をとりながら、従業員の安全配慮に対応していくことが必須であると考えていたため、2014年に新たに危機管理部を設けました。そのため、グローバルに弊社の従業員の健康と安全に対して対応いただける企業でないと、私たちのビジネスを安全に安定して継続することが難しいと考えていました。
「グローバルに対応してもらえる」の一つの例としては、複数言語で対応いただけることです。従業員は出張・赴任先においてリスク発生時には母国語での会話となります。例えば、中国国籍の方が、インドネシア赴任中に、体調不良やトラブルに巻き込まれた際、母国語で医師、セキュリティ専門家と話をしたいというリクエストがあります。シンガポール国籍やアメリカ国籍の方が、中国やメキシコなどに出張する場合にも同様に、現地において母国語で話をしたいとリクエストがあるのです。そのようなさまざまなニーズにおいても、各言語で従業員の健康や安全面に対してグローバルにサポートをしていただけます。
2つ目は、メディカル面のサポートにおいて、24時間365日、直接、医師と連絡がとれる点です。
急に腹痛が発生し動けなくなった、嘔吐を繰り返して発熱し始めたなどの場合に、す ぐに、医師と連絡がとれるのは、出張者・赴任者においては非常に不安の軽減につながります。
3つ目は、メディカル面とセキュリティ面のサポートを、インターナショナルSOSの日本人医師やセキュリティ専門家の方に一貫して対応してもらえる点です。なぜなら、同じ企業内の1社でメディカル 面とセキュリティ面の両方を一貫してサポートできるところでないと、特に有事の際には、さまざまな部門との連携が上手くいかない場合、対応が遅れてしまう可能性があります。それが従業員の健康や安全にも影響を与えてしまうというリスクに繋がります。そのようなリスクは、従業員の安全を配慮するという観点において絶対に避けなければならないことです。
―2017年インタビュー時に、「何かが起こった時の危機管理」から「何かを発生させない危機管理への移行」に取り組まれていましたが、具体的にどのようなことを弊社のサービスを活用して取り組まれているのかを教えてください。
「何かを発生させない危機管理」への取り組みについては、「トラッカー」が大きく寄与しています。導入当初、全従業員の海外出張の一括管理、有事の際に従業員の所在地を確認・連絡をとるためのツールとして、「トラッカー」を活用していました。ある時、過去に海外で事故にあったり、スリや置き引きなどの軽犯罪 に巻き込まれたりしたことのある従業員は、どのような傾向があるのかなと思い、渡航履歴を「トラッカー」で分析してみたのです。そこで分かったことは、トラブルにあう従業員の傾向として、約4回以上の渡航数があり、かつ、一人ではなく同行者がいたということでした。逆に一人で渡航している従業員は、トラブルにあう頻度は非常に少ない傾向にありました。それから私は、海外出張・赴任前研修を行う時には、特に4回以上渡航している従業員や、同行者と一緒に渡航する従業員については、トラブルにあう可能性が高い傾向がある旨を伝えています。「トラッカー」のおかげで研修時に 話す内容の工夫ができ、従業員にも事前に意識付けをさせることで、「トラブルを未然に防ぐ」ことができていると考えています。
―新型コロナウイルス感染症(以下COVID-19)の発症当初(2020年初旬頃)、何が課題だったのでしょうか。また具体的にその課題に対して、どのように取り組まれたのかを教えてください。
海外赴任者が罹患した時に、どのように対応したらよいのかがまったく分からなかった、ということが大きな課題でした。すべてが初めての経験でしたので、大きな不安だけが先行してありました。ただ、すでに弊社ではインターナショナルSOSのアシスタンスサービスを導入していて、どのようにサポートしていただけるかを理解していましたので、現場で大きな不安を抱えている赴任者には、「インターナショナルSOSに連絡すれば、24時間365日、最大限にサポートしてもらえるので、とにかく連絡をしてください。安心してください。」と何度も何度も言い続けました。幸い、弊社では、COVID-19に罹患した従業員はとても少なかったのですが、自宅療養している従業員に対しても、インターナショナルSOSに連絡すれば、24時間365日、日本人医師と直接話ができ、サポートしてくれる旨を言い続けました。この「24時間365日、電話一本で、インターナショナルSOSの日本人医師と直接話ができ、サポートをしていただける」という点もサービスを導入する大きなメリットの一つで、本当にすごいことだと思っています。
また、当時、COVID-19に関する噂や誤情報が錯綜 していて、正確な情報を取得し、発信することがとても困難でした。赴任者にとっては、「正確な情報がわからない」ということが不安であり、それが混乱を招くということを理解していましたので、インターナショナルSOSの会員専用サイトにあるCOVID-19情報のURLをメール内に貼付し、従業員にはそのURLから正しい情報を確認してもらうように誘導しました。
まずは 、インターナショナルSOSに連絡すること、インターナショナルSOSから発信している情報を確認しながら冷静に対応していきましょうと、全従業員に根気よく伝えていきました。
今考えると、もしインターナショナルSOSの情報にアクセスできなかった場合、従業員には不十分な情報しか提供できなかったのではないかと思います。
―COVID-19パンデミック時において、事前に取り組んでいた海外安全管理対策が活きたものはありましたでしょうか。
まずは、現地の赴任者だけでなく全従業員へ「24時間365日、電話一本で、インターナショナルSOSの医師と直接話ができる体制をとっています。また可能な範囲で医療搬送を行える体制もとっています。」というメッセージングをし、各国のリスクマネージャーからも現地従業員に対して、インターナショナルSOSからのサポート体制を周知してもらいました。そのことが、全従業員のCOVID-19に対する不安の払拭の一助にもなり、大きな混乱もなく乗り切ることができたと思っています。もしサービスを導入していなかったら、混乱している中、現地リージョンと連携しながら、現地の医療機関の情報や病床利用率などの情報を収集したり、その他さまざまな対応を行わなくてはいかなかったりしたかもしれません。それらをすべて自分たちで対応できたかどうかもわかりませんね。
あともう一つは、ある地域でCOVID-19の感染が拡大し始めたときに、 ある部門から「海外出張者・赴任者がどのくらいいるか、至急提出してほしい」と依頼がありました。私はすぐに、「トラッカー」からデータを抽出し、3分後には担当者へ情報を提出することができたのですね。この速さには担当者もとても驚いていました。「トラッカー」を事前に導入し、緊急時においても対応できる体制を整えていたということは、今振り返ってみても非常によかったと感じています。
―COVID-19パンデミックをご経験されて、パンデミック前とパンデミック後で危機管理について意識の変化はあったのでしょうか。
パンデミック前は、セキュリティ面のアラート情報を注視する傾向にありました。例えば、メキシコでの麻薬組織における抗争情報や、メキシコ地域での危険地域の情報などですね。もちろんメディカル 面での情報も従業員には発信していましたが、パンデミック後は、特に感染症の予防に対する意識が高まったこともあり、インターナショナルSOSの会員専用サイトから感染症に関する情報を積極的に取得するようになりました。
―先日、櫛田様は、弊社セキュリティ専門家からISO30130:2021(組織向けの渡航リスク管理の指針)についてレクチャーを受けられましたが、ISO30130:2021についてどのようにお考えでしょうか。
インターナショナルSOSの医師や専門家の方から、海外安全対策や危機管理についての指導を受けながら今まで取り組んできた方向性や考え方、また海外出張者・赴任者に対する安全配慮にもしっかり対応しているということをISO31030:2021のガイドラインで確認することができました。渡航リスク管理の考え方を理解し、対策が正しく行われているのかを確認するのにとても有益なガイドラインだと考えています。
―今後の海外安全管理体制へのお取り組みを教えてください。
現在の出張規制は、COVID-19発生時に作成した厳しいものを継続して適用しています。今後COVID-19が収束した時に適用するための特定のリスクだけに特化しない出張規制の作成、感染症対策も含めた海外安全管理体制を構築するように進めていきたいと考えております。
―弊社アシスタンスサービスの導入をご検討されているお客様へ、メッセージをお願いします。
企業として、海外出張者・赴任者の健康と安全をきちんと守っていくことが重要です。最悪の事態を想定して、その対応体制をしっかりと企業内で議論・検討し、それに対応できる組織体制の整備や各種の準備を進めて行くことが必要となります。また、企業が必要とするサービスを提供して頂けるアシスタンス会社を選定していくことが非常に重要であると思います。
お客様情報
オムロンエキスパートリンク株式会社様
https://www.omron.com/expert-link/
取材日:2022年8月